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【憲法改正-緊急事態条項】公約比較-15の争点- 2017衆議院議員総選挙

衆議院総選挙公約比較-15の争点-シリーズ
今回は【憲法改正-緊急事態条項に関して】です!

この記事では…

▼緊急事態条項とは何かについてと改正での争点を簡易に説明し、緊急事態条項が注目された経緯、憲法改正議論の背景を解説します。
▼各党の政策と緊急事態条項の議論の具体的内容に触れ、各々の見解の狙いや理由、それに対する批判、デメリット、対案を解説します。

憲法改正「緊急事態条項」概論

憲法改正議論の対象となっている緊急事態条項とは、文字通り戦争や災害などの緊急事態において、政府や国会などに例外的な権限を認める条項です。現行の日本国憲法には存在しない条項であり、これを追記するかが議論の対象となっています。

▼注目の経緯

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、いまだに私たちの記憶から薄れていません。この未曾有の大震災に対して国の迅速な対応が求められたことなどから、緊急事態条項も注目を集めるに至りました。自民党の憲法改正草案に緊急事態の章が新設されたのも、2012年のことでした。

▼議論の背景

時代の変化とともに法の役割も変わるものであり、情勢や状況に対応できなくなったと考えられれば、法は改正の必要性が議論されます。それは憲法も例外ではありません。

そもそも憲法は立憲主義の下、国が守る法であるとの性質を有しています。ただし、この制約により国民を守ることができない事態が出てくるのであれば問題であるとも言えます。差し迫った事態においては、そのような問題が出てくることが推察されましょう。

しかし勿論、憲法は最高法規ですから、本当に憲法改正の必要があるのか、またその内容が国民の権利を合理性を欠いて脅かしていないか、より慎重な議論が必要です。特に緊急事態条項とは,一時的な権力集中を意味するものであり,その是非は大きな議論になっています。

憲法改正「緊急事態条項」各党の政策と議論

▼政策概観

緊急事態条項に関しては様々な角度から議論が行われています。その内容に関しては次に詳しく述べるとして、ここでは各党の政策、姿勢の概略を示しておきます。

●推進(自民党,日本のこころ) 

自主憲法制定を目指す自民党は、まず憲法に緊急事態条項を盛り込んで改正するとし、日本のこころは自主憲法に国家緊急権を整備するといいます。

また、自民党の今回の公約には緊急事態条項の具体的内容は記されていませんが、過去の2012年草案には記載がなされています。

●慎重(公明党,希望の党,立憲民主党?) 

次に、公明党や希望の党は緊急事態条項を検討するという姿勢ですが、前者は緊急時の国政選挙引き伸ばしについて言及し、後者も緊急事態にこそ議会制民主主義が機能するべきであるから、緊急事態の国会議員の任期の特例などを設けるかどうかについて議論すると公約に記しています。立憲民主党の枝野代表も過去,この趣旨の発言をしていました(後述)。

●反対,法律で対応(共産党,社民党)

そして最後に、共産党は安倍政権の憲法改正に反対するとし、社民党は緊急事態対応のための憲法改正は不要だと唱えます。また幸福実現党は憲法改正によらず、緊急事態法という法律を制定することで対処しようとしています。

では、以下緊急事態条項に対する具体的な議論内容と政策に移ります。

各党の政策

▼政策① 《緊急事態対応の方法論ー改憲推進と改憲不要》(前者は自民党、日本のこころ 後者は社民党、幸福実現党) 

「憲法改正まで必要か?法律ではだめなのか?」

自民党や日本のこころが改憲を推進しています。しかし社民党が緊急事態対応に憲法改正は不要とし、幸福実現党が法律によって対応を図ることを今回公約に掲げ、憲法改正による緊急事態条項創設に反対しています。

ここではまず、本当に憲法改正という厳格な手段が必要なのかということが議題に上ります。

●憲法改正が必要である、または一部必要事項あり

社民党や幸福実現党の憲法改正は不要という見解がある一方、改憲を推進する自民党の安倍首相は、国民の安全を守るために緊急事態条項を憲法に位置づけることが大切である旨を述べました。

また、「東日本大震災のとき、現場の行政は私権制限によって訴訟が起きるのではないかと混乱した」と自民党の山谷えりこ議員はいいます。憲法改正には、こうした混乱をさける意図もあるといえましょう。

ただし、現在立憲民主党の党首である枝野幸男議員は過去、「緊急事態について憲法上必要なことがあるとすれば、国会議員の選挙の延長の一点」だと述べました。地方選挙は特例法で対処可能ですが、憲法で衆参両議員の任期は定められているためそうした対処は違憲として考えられるのです。

このことは、希望の党や公明党が今回公約で言及していることとも対応します。立憲民主党については、今回の公約では緊急事態条項に触れていません。

また、既存の法律で予想していない事態は起こり得るのであって、法律で全てを想定することは不可能だとする見解もあります。

●改正不要、または法律で対応可能事項あり

一方で先程の言論につき枝野議員は、緊急時の個人の権利の制限等については、令状が不要の現行犯逮捕を引き合いに出し緊急時の公共の福祉の観点のもと法律で対応できるとしています。人権も、公共の福祉のためには内在的制約を受けるのです。また、国会議員の任期延長は参議院の緊急集会で対処できるとの意見もあります。

このように、緊急事態対応の方法は見解の分かれる結果となっています。

▼政策②《緊急事態条項の内容1-首相への権限集中》(自民党2012年草案)

「緊急時に、首相に権力が集中するのはよいことなのか?問題があるのか?」

前述のように、今回2017年の自民党の公約には具体的な緊急事態条項の内容は書かれていません。ですが2012年の自民党憲法改正草案には、緊急事態宣言時には、内閣の政令が法律と同様の効果を持つことが明記されていました。この政令は事後国会の承認を受けなければなりませんが、草案によれば、緊急事態時の政府の権限は絶大となることは間違いありません。

●狙い
この政府の権限強化で、無用な混乱をさけ、緊急事態における物資配給や救援活動を迅速化するなどとされます。

●批判
しかし、この権力集中は、立憲主義という憲法の大原則に基づいて日弁連などからも批判されています。憲法は「国家の横暴により、国民の権利が脅かされることがないように定められた国家に対する制約」という本質をもっています。このように憲法は対国家規範性を持つべきであるにも関わらず、緊急事態条項は緊急時に政府に対して大きな権力を与えるため、立憲主義を破壊する恐れがあると批判するのです。

これに関連して、ワイマール憲法とナチスの全権委任法を引き合いに出してこの緊急事態条項の危険性を訴える見解もあります。ただし、全権委任法が議論されている緊急事態条項よりも強力な権限を政府に与えたことは注意すべきでしょう。

さらに、日弁連は、被災3県のうち37市町村にした調査によると災害対応は市町村主導で行うべきという回答が70パーセント以上得られており、中央政府への権限強化ではなく、市町村主導の災害対応が求められると唱えました。

▼政策③《緊急事態条項の内容2ー緊急時の国会議員任期延長検討》(希望の党、公明党)

「緊急時に国会議員の任期を延長することはよいことなのか?問題があるのか?」

先ほども触れましたが、緊急事態時における国政選挙引き延ばし、国会議員の任期延長について希望の党、公明党が言及しています。

●狙い
緊急事態の場合に、議員の任期が切れ、議員不在のまま意思決定をしなくてはならなくなるとすれば、国民の意向が反映されず対処すべきと言えましょう。

●批判
しかし、共産党議員からは「緊急事態だと政府が宣言し続ける限り、時の政権を自由に延命することになる」という批判もあります。また、参政権の制約は、緊急時の公共の福祉で認められるかも考えるべき事柄です。

最後に

緊急事態条項に関する議論は、多角的な切り口からされる必要があり、どちらがいいのか誰もが納得する答えは出されていません。ただ1つ確実に言えることは、私たちが皆この議論に参加し、深化させていくことが必要であるということです。「緊急事態」が起こってからでは遅いのです。

参考資料

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2017-03-17/2017031702_05_1.html
https://news.yahoo.co.jp/byline/egawashoko/20151124-00051778/
https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2017/170217_3.html

この記事は全党の公約を参考に執筆しました。公約へのリンクはこちら

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