衆議院総選挙公約比較-15の争点-シリーズ
今回は【統治機構】です!
目次
統治機構改革について
そもそも統治機構とは、国家を統治する仕組、組織、機関のことを指します。日本国憲法では、日本の統治機構として、内閣(行政を司る)、国会(立法を司る)、裁判所(司法を司る)が規定されています。そして、現在議論されている「議員定数の削減」「一院制の導入」「選挙制度」は、国会に関わる統治機構改革です。また、道州制は、新たな統治の仕組みを導入しようとしています。
議員定数の削減について
立法府である国会の議員定数削減が議論されており、2013年の480人時点から、2014年には衆議院は475人(小選挙区295人・比例代表180人)、参議院は242人(小選挙区146人・比例代表96人)に、2017年からは465人(小選挙区289人・比例代表176人)になっています。
この流れを汲み、さらなる議員定数の削減を考えている政党が多く、自民党、希望の党、日本維新の会、立憲民主党、幸福実現党は公約に確約しています。その理由は、国会議員の年収(議員報酬)の平均は、約2200万円(議員手当1552万8000万円期末手当:635万円)と言われており、予算削減のために身を切る姿勢を世に示すというものです。他方、公明党、共産党、社民党は公約には書いていません。
一方で、人口10万人当たりの総議員定数は0.57人であり、これはOECD加盟国34ヶ国中33位と、人口に対して議員の数が非常に少ないという事実があります。国民の声を代弁する議員が減ることは、反映されない国民の声が多くなることに繋がるのではないかという懸念もあります。また、有権者から人気を得るためのわかりやすい政策で、本当に国家の将来を見据えた改革ではなく、ポピュリズムを煽るものなのではないかとの見方もあります。
一院制について(希望の党,日本維新の会,幸福実現党が推進)
希望の党や日本維新の会、幸福実現党など一院制を導入しようと公約に盛り込む政党もあります。一院制とは、現在衆議院と参議院の二院制の形を取っている国会を、一院にするというものです。これには、議員定数を大幅に削減できるという利点以外にも、衆院議員で審議され通過したものを参院でもう一度審議する今の体制よりも、国会での意志決定をより迅速にできることがあります。一方で、審議不十分となってしまうのではないか,6年を任期とする「良識の府」たる参議院がなくなれば,数年単位で選挙が行われる衆議院のみとなり,短期的に国民の理解を得られる政策しか取れなくなってしまうのではないか等の意見もあります。また、希望の党は、大幅に議員定数を削減するために一院制を導入する公約に書いており、議員定数の観点からの一院制導入の議論もあります。
道州制について(自民党、希望の党、日本維新の会が推進)
道州制とは、北海道以外の地域に数個の州(9、11、13の案がある)を設置し、それらの道州に現在の都道府県より高い地方自治権を与える制度のことです。要は、全国47の都道府県を廃止し、地域ごとに「道」または「州」に再編成するということです。
道州制を導入するねらいを推進している自民党、希望の党、日本維新の会のそれぞれを比較していきましょう。
まず自民党は、人口減少・少子高齢社会への対応に、地域経済力と国際競争力の強化のために道州制を推進しています。その狙いは、中央集権体制から、地方分権体制への一新と、東京一極集中を是正し、地方で多様かつ活力のある経済圏を創出するためとしています。また、国・地方の政府の徹底した効率化なども掲げています。
次に希望の党は、地域活性化のために、国依存体質を脱却し、国の権限と財源を移すこと、そして、市町村間の競争を促進し、既得権を守ろうとする業界の要望よりも、地域住民の提案を生かした新たな発想でムダをなくすことを狙いとしています。
また、日本維新の会では、首都機能を担える大阪都をつくり、副首都とすることで中央集権体制と東京一極集中を一新し、さらに多極化(道州制)を実現し、国からの上意下達ではなく、地域や個人の創意工夫による社会全体の活性化を図ることを狙いとしています。
これらからも読み取れるように、道州制の主な狙いは、権限と財の分配による「地域活性化」「行政の効率化」であることがわかります。
一方で問題点として、道州間において、財源が豊かで社会基盤が整っている都市への人や投資の集中により富が集中し、格差が生じることや、州内でも、州都となる都市への一極化が進み、結果的に、現状よりもさらに地方(田舎)の過疎化や老齢化が進み格差が拡大するのではないかといった点が上げられます。
推進政党が多くの議席を獲得することが予想されることから、道州制の導入が現実味を帯びてくる中で、いかに有権者がメリットやデメリットを冷静に比較し、意見を持つための国民的議論を醸成できるかが大切になってきます。
最後に
統治機構という国を動かす上で根本となるシステムは、私たち国民を守ってくれますが、一方で国民の権利を脅かす危険性もはらんでいます。私たちは日本という平和な国にあって忘れがちですが、念頭に置くべきはこのことであると考えます。
参考資料
この記事は全党の公約を参考に執筆しました。公約へのリンクはこちら