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パレスチナの空手道場へ。【長期連載〜パレスチナの今〜第4回】

パレスチナではどんなスポーツが人気だと思いますか?

実はパレスチナでは、空手が人気で有名なスポーツの一つなのです。

ということで、先日私はパレスチナに数ある空手道場のうちの1つ、「Fuad Martial Arts Academy」に行ってきました。この道場はカランディアという町にあり、パレスチナ自治政府の所在地である街ラマッラーからイスラエル側に出る検問所のすぐそばにあります。

この道場は2年ほど前にできたらしく、生徒は60人ほどいます。

生徒の年齢層は5歳から15歳。男の子と女の子の人数は半分くらいでした。

中には「この道場は遅刻しないし、先生はよく空手を知っていて礼儀を重んじるから」という理由で、息子をこの道場に通わせているというお母さんもいました。

始め、礼、戻れ、やめ、構え、など技の名前や数字などの掛け声は日本語で行なっています。

現在空手道場の代表を務めるフアードさん(23歳・写真左)と、彼の師匠ハッサンさん(70歳・写真右)。二人とも黒帯です。

 

70歳を超えながらも未だ空手を続けている師匠に、今日は空手道場のインタビューをしに来た旨を伝えると、

「空手道の『道』はWAY OF THE LIFEだよ。自分はもう70歳だからリタイアしたけど、空手からいろんなことを学んだから恩返しをしたい」

と話してくれました。

技や型の掛け声もしっかりキマっていて、熟練の雰囲気が感じられました。

遅刻した生徒に、「勝手に道場に上がるな!遅刻したんだからしっかりそこで挨拶をしてから入りなさい!」と注意していて、単なるスポーツとして以上のものをここで教えているようでもありました。

 

現在の道場の代表であるフアードさんにインタビューをしました。

Q.空手を始めたきっかけは?

A.パレスチナでは空手がとても有名なんだ。だから自分もやってみたんだけど、これがすごく自分に合っていたみたいで。もう空手をやって10年くらいになるよ。

Q.どうして空手が好きなんですか?

A.空手の何もかもが好きだけど、イスラム教と通じるところがあるから、かな。イスラム教では、「あなたの体を大事にしなさい」と教えられる。その点、空手は怪我をしないスポーツだ。もちろん行い方によっては怪我することもあるけど、他のスポーツより怪我をする可能性は低い。それに、道着や掃除も大切にする。これも宗教にも通ずる。「ものを大切にする」ということを、身を以て学べるスポーツだから好きだな。

輝かしい功績が伺えるトロフィーと、大会中の写真の数々

 

Q.空手をやっていて、一番楽しいことはなんですか?

A.全部だよ!ははは(笑)でも、強いて言うなら、空手を全くわからない人が空手を通じて何かを学んでいくことが好きかな。道場への入り方、挨拶の仕方・・そういうことを何も知らなかった人が、少しずつ成長していくのを見るのが好きだよ。

 

息子がこの道場で空手を学んでいる、と言う女性が見学に来ていました。

聞くと彼女も昔空手をやっていたそうで、「得るものが多いから」と空手を息子にも学ばせているそうです。

昔は女の子が空手を学ぶことは少なかったそうですが、今は男の子と半数ずつになるくらい多くの女の子が空手を学んでいます。

女の子の生徒が増えていることについても、フアードさんに質問してみました。

Q.昔は女の子が空手を学ぶことは少なかったそうですが、今はこんなに多くの女の子が空手を学んでいます。このことについてどう思いますか?

A.とてもいいことだと思う。女の子自身が強くなることを、家族も望むような社会になったということだと思う。空手を学ぶことで自信がつく。そうやって自分自身を信じるようになることで、人生をまっすぐ進める。

 

フアードさんは私と同い年とは思えないくらい落ち着いていて、大変真面目な方でした。パレスチナでは多くの子どもが空手を習いますが、彼のように武道として極める人はあまり多くありません。

真面目で誠実な彼自身の人柄が、空手というスポーツにも良く合っているという印象を受けました。

フアードさんと、空手道場に飾ってある証書。

 

パレスチナと空手、というとなんだか想像がしにくい組み合わせだと感じるかもしれませんが、このように本当に空手を愛して学び、さらに多くの子どもにも広めているパレスチナ人がいます。

少しでも多くの人にパレスチナに親近感を持ってもらえるよう、今後も記事を書いていきたいと思います。

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