今年のノーベル文学賞が、まさかの発表延期となりました。
ノーベル賞を選考するスウェーデン・アカデミーは、「今年の同賞の発表を見送り、来年分と合わせて発表する」という声明を5月4日に出しました。
「賞の創設以来、最悪の危機」に陥っているノーベル文学賞。文学賞はノーベル各賞とともに毎年10月上旬に発表され、最近は村上春樹氏の受賞に注目が集まっていましたよね。
文学賞は近年、長崎出身の英国の小説家カズオ・イシグロ氏(2017年)、米国のミュージシャンで作詞家のボブ・ディラン氏(16年)が受賞。日本では川端康成氏(68年)、大江健三郎氏(94年)の2人が受賞しています。
そんな権威あるノーベル文学賞に、一体、何があったのでしょうか。
そもそも、スウェーデンアカデミーって何?
スウェーデン・アカデミーとは、ノーベル文学賞の選考を行う期間です。18人の会員によって構成され、会員資格は終身です。つまりは、文学界の神18による神々の集いのようなものです。
元々、スウェーデンアカデミーはフランスのアカデミーに対抗して、1786年にスウェーデン国王・グスタフ3世によって創設されました。スウェーデン文学やスウェーデン文化の研究・振興を目的としており、ノーベル賞を創設したアルフレッド・ノーベル氏がスウェーデン人であることから、ノーベル文学賞の選考期間の役割を担うようになりました。
アカデミー内部で一体何が?
事の発端は、選考に大きな影響を持っているとされる写真家・ジャン・クロード・アルノー氏にレイプ疑惑が浮上した事です。
彼は、選考委員で詩人・作家のカタリーナ・フロステンソン氏の夫であり、自らもアカデミーから資金提供を受けて文化施設を運営していた文化界の重鎮です。女性18人から「彼から立場を利用したレイプ被害を受けた」と訴えがあり、大きな問題となりました。その後、彼が発表前に文学賞の受賞者を把握し、外部に漏らしていた疑いも報じられました。
男性はすべての疑惑を否定していましたが、アカデミーの問題の対応をめぐって、アカデミー内で対立が激化。会員18人のうち事務局長や男性の妻ら6人が辞意を表明し、「機能不全」に陥りました。世論の猛反発もあり、1901年から続く文学賞の権威を守るために「今回は見送り」となった格好です。
マズかった対応ってどういう事?
では、スウェーデンアカデミーのマズかった対応とはどのような対応だったのでしょうか。
先ほど述べた通り、事の発端は#MeToo運動を背景に、女性18人がアルノー氏のレイプ被害を大手紙に証言した事です。
アカデミーは、その問題の対応をめぐって対立してしまいました。
まず、男性の妻の留任を認めるかの会員投票では、留任多数となりました。しかしその決定に対して抗議する会員が辞意を表明しました。
そしてアカデミーの事務局長も、問題の調査を外部に委託するなどして「改革」を志向しましたが。指導力不足を責められて辞任に追い込まれました。
その結果、アルノー氏の妻を含む6人が辞意を表明し、会員18人のうち8人が空席という異例の「機能不全」となってしまったのです。
文学賞の発表を保留したことは「適任者なし」などを理由に過去に7回ありますが、不祥事での延期は初めてです。
アカデミーは声明で、今年の選考作業は予定通り続けるが、「次までに信頼回復する必要がある」としています。ただ、権威が失墜しつつあるなか、現体制による選考を続けることで理解を得られるかは不透明なまま。今後はどうなるのでしょうか。
参考:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13480579.html