POTETOPIC CLASSROOM vol.1  ロヒンギャ族の難民問題

目次

授業レポート 「湘南台高校にて、POTETOによる主権者教育授業を実施しました!」

皆さん、こんにちは!

教育事業担当の古野です。

先日3月14日、ついに・・・

POTETOによる主権者教育授業を実施してきました!!!

ずっとずっと構想を練ってきたものを、やっと形にすることができました。

以下、当日の授業レポートです。

「シチズンシップ教育開発校」での出前授業

記念すべき第1回目は、神奈川県にある湘南台高校

この学校は、神奈川県より「教育活動開発校(シチズンシップ教育)」の研究指定を受けている、政治参加教育などに熱心な高校です。

古井、古野、野田の3名で、いざ出陣。

対象の生徒さんは、高校1年生

1クラス40名を担当させていただきました。

2月に発信した「イチメンニュース」を授業題材に

生徒の皆さんには、事前に2月に発信したイチメンニュースの一覧を見ていただき、

アンケートで「気になるニュース」を選んでもらいました。

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イチメンニュース」とは・・・

POTETOがツイッターで発信している、新聞の朝刊1面をわかりやすくグラフィックデザインしたニュースのこと。「新聞は読みにくいしめんどくさい、けど読まなきゃ・・・」という大学生を中心に人気拡大中。話題となっている時事ネタに関して深掘りする「トピックニュース」も、時々発信しています。)

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そして、こちらがアンケート結果です。

生徒さんからダントツ人気だったニュースは、

「プレミアムフライデー(38名中26名)」

でした!

ちなみに、こちらがそのトピックを扱ったイチメンニュース
(2017年2月25日の毎日新聞朝刊の記事より)

この結果を聞いた生徒たちは、当然

「ハイハイ、この流れで来たらプレミアムフライデーなんでしょ」

という空気に。

ところが、今回私たちが授業テーマに選んだのは、なんとこちらのテーマ。

人気ワースト1の

「ロヒンギャ族の難民問題」です!!!!!

当然、生徒からは

「「ええええーーーーーーーーーーーーーーー」」

という驚き&落胆の声が。

まずロヒンギャって何ぞや、と。誰ぞや、と。

38人中2人しか気になっとらんぞ、と。

確かに、その通りです。

あらゆるツッコミが飛んできそうですが・・・

これには理由があります。

今回の主権者教育のねらいはズバリ、「ニュースを知ることの大切さ」。

これまで関心を寄せていなかった政治トピックについて知り、

友達と話したり、自分で深く考えてみることによって、

全く気にしていなかったニュースが急に身近になり、

「気になるニュース」になるというオドロキ体験をして欲しかったのです。

ですので、生徒達には

「この45分間の授業が終わったときに、

難民のニュースをベストオブ気になるニュースにして見せます!」

という一大宣言をし、いよいよ授業スタート。

「イチメンニュース」+「アニメーション動画」で、ニュース解説

まずは、2月4日に報道されたニュース

「ミャンマーでロヒンギャ族の民族浄化が行われていることを国連が報告」

(カタールの衛星テレビ局 アルジャジーラより)を、

実際にPOTETOが発信したイチメンニュースを使いながら解説していきます。

解説中の様子。

ちなみに、実際につかったスライドはこちら。
「ロヒンギャ族の難民問題」についての解説記事が、4枚で1セットとなっています。

ニュースの内容を解説したあと、

生徒にはこちらのアニメーション動画を見てもらいます。

注目していただきたいポイントとして、なんとこちらは

今回の授業のためだけに、特別に作成したアニメーション動画

なのです!!!!!!!!

難しい政治のトピックを、わかりやすいアニメーションにしたい

という、POTETO設立当初からずっと描いてきた夢を、

今回やっと形にすることができました。

まだまだ改善の余地はありですが・・・感無量・・・

おかげで、前日は全員徹夜です

論点は、「ぼくらは難民を受け入れるべきか」

イチメンニュース+アニメーション動画 によるニュース解説のあとは、

いよいよ論点の提示をします。

ここで改めて、動画に出てきた

・受け入れ賛成の主張

・受け入れ反対の主張

の両方を、生徒と一緒に確認していきます。

こういった主張を踏まえながら、生徒には

日本に難民を広く受け入れるべきかどうか」について、

まずは個人で考えてもらいます。

「メディア」と「政治家」から流れ出す情報を、生徒自らキャッチしにいく

ここからいよいよ、ワークに入っていきます。

今回のポイントは、ズバリ「主体性」です。

どういうことかというと・・・・

授業は、上記の流れに従ってすすみます。

最終的にクラス内で「難民受け入れについての国民投票」を行うのですが、

それまでの時間は

メディア役→世論調査報道や事件報道

政治家役→賛成派or反対派の主張

を行います。

そして

生徒には、これを「聞くのも自由、聞かないのも自由」と伝えます。

ディスカッションをするかしないかも、生徒の自由です。

多くの主権者教育授業では

「候補者演説を聞く時間」「ディスカッションをする時間」など、

生徒が決められた枠の中で受動的に情報を集め、最終的に意思決定する

といったプロセスが一般的です。

しかし私たちがこの授業で伝えたかったのは、

主体的に情報を摂取することの大切さ」でした。

実際の選挙では、メディアや政治家からあらゆる情報が一気に流れ出し続け、

主権者である私たちは その混沌とした情報の渦の中から
自ら情報をキャッチし、自ら選択判断をしていかなければなりません。

主権者のために、わざわざ国が

「全候補者の主張を聞くための時間」や

「友達と政策について話し合うための時間」を用意してくれる訳ではない。

だからこそ、主権者として判断するためには主体的に情報をキャッチしに行く必要があり、

そのリアリティや難しさを生徒に体験してもらいたかったのです。

大白熱の候補者演説!1回目の世論調査は、ほぼ拮抗

生徒にはあらかじめ

世論調査票(「賛成・反対」と書かれたテープ)を配布しておきました。

これを演説が始まる直前に回収します。

外部から何の情報も与えられていない状態で、

賛成派と反対派がどれくらいクラス内にいるかを調査するためです。

次は、いよいよ候補者演説の時間です。

・難民受け入れ賛成派の野田候補

・難民受け入れ反対派の古井候補

の両者が、教室の端と端に分かれ、同時に2分間の演説をスタートします。

こちらは賛成派の野田候補。

「同じ地球に生まれた、同じ人間であるならば、彼らの苦労や悲しみを十分理解し、彼らを安全な場所へ受け入れてあげるのが、わたしたちの使命であり、国際平和への第一歩ではないでしょうか。」と、人道的措置の観点から、難民受け入れを主張します。

一方、こちらは反対派の古井候補。

「わたしたちが難民の人々を受け入れることになれば、彼らが生活するために、私たちが一生懸命働いて稼いだお金が使われてしまうのです。こんなことは、許してはいけません。もっと私たち国民のために、国のお金は使われるべきだと思いませんか!」

と、財政的な面から難民受け入れ反対を主張します。

自分と考えの近い候補者の演説を聞きに行く生徒もいれば、

真逆の考えを持っている候補者の演説を聞きに行く生徒もいました。

中には、決めきれず中央で立ち尽くしてしまう生徒も・・・

情報は「同時」に発信されているからこそ、

誰の話を聞くかという選択が確実に起こる=情報の氾濫が起こる

という難しさを、生徒に体感してもらいます。

演説終了と同時に、1回目の世論調査結果の発表。

1回目の結果は

「賛成19、反対20、無効票1」と、見事に拮抗!

この結果に、生徒もザワザワ・・・

フリーディスカッションに突入

このタイミングで、5分間のフリーディスカッションに突入します。

生徒は教室を自由に動き回り、

友達を説得したり、候補者に突っ込んで意見を聞きに行ったり・・・

「何も話さない」というのも選択肢のひとつ。生徒の自主性に任せます。

フリーディスカッションの様子。

メディアによる「事件報道」

ディスカッション終了後、突然メディア役(古野)から

「皆さん、注目です。

ここで重大なニュースが飛び込んできました!」

と、難民に関する事件報道の発表を行います。

1つ目のニュースはこちら↓

「たったいま、難民受け入れ推進国であるD国で、難民による集団暴行事件が起こった模様です。調べによると、無害の一般人女性を、複数人で襲ったとのことです。現在も調査は続いていますが、犯人らは未だ市内を逃走中とのことです」

 

そして2つ目のニュースはこちら。↓

「つい先ほど、湘南の海に、難民とみられる少女が打ち上げられているのが発見されました。市民が警察に通報後、救急車で搬送されましたが、死亡が確認されたとのことです。警察は少女の身元を確認するとともに、事故の原因を調査しています」

1つ目のニュースは「難民受け入れ賛成派に、不利に働く報道」となっていて、

難民受け入れ賛成国のドイツで、2015年大晦日に実際に起こった

ケルン大晦日集団性暴行事件をヒントにしています。

2つ目のニュースは、「難民受け入れ反対派に、不利に働く報道」となっていて、

こちらも2015年9月にシリア難民の少年とみられる遺体がトルコの海岸に

打ち上げられていたというニュースをヒントにしています。

本来は世論調査の状況によってどちらか一方のニュースを報道しようと考えていたのですが、結果が拮抗していたため、急きょ2つとも報道することにしました。

>最後の演説!2回目の世論調査の結果は・・・

フリーディスカッション・事件報道を行ったのち、

世論調査票を用いて、2回目の世論調査を行います。

世論調査票を回収したら、

いよいよ最後の演説です!!!

 

各候補による最後の訴えに、

じっくり聞き入る生徒たち・・・

古井曰く、

「生徒の演説を聞いているときの目が真剣すぎて、

もはや睨まれてた・・・」

ようです。(笑)

 

最後の2分間の演説が終了すると、

2回目の世論調査結果が発表されます。

結果は

「賛成19、反対21」で、なんとわずか2票差で

反対派が優勢!!

2回目の候補者演説と世論調査の結果を受けて、いよいよ最後の国民投票に移ります。

国民投票

生徒にはあらかじめ一人一枚の投票用紙を配布し、

賛成か反対のどちらかを記入して投票してもらいます。

いざ、投票!

投票を終えた生徒も、結果が気になってソワソワ・・・

ここで授業のまとめに入っていきます。

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授業のまとめポイント☝

①実は、日本にも難民はいる!

→今回の授業で扱った「ロヒンギャ族」、実は日本にもいるんです。(現在、約200人が群馬県館林市に在住しているとのこと)

移民・難民問題は、どこか遠い国の話のように思えますが、実はすでに自分たちの身近で起こっている問題であることを生徒に伝えます。

②いま世界中の選挙には、移民・難民問題が大きく関わってきている!

→イギリスの国民投票やアメリカの大統領選挙だけでなく、先日のオランダ議会選挙や4月に行われるフランス大統領選挙にも、この移民・難民問題は大きな争点となっています。難民受け入れに賛成派、反対派の国の主張も様々。難民問題に注目することで、世界の動きが見えてくる、かもしれません。

③「情報の大洪水」のなかで政治的意思決定をすることのむずかしさ

→今回の国民投票は、まさに「イギリスのEU離脱」を決定づけた国民投票さながらのリアル感を演出。実際の選挙では「メディア」「政治家」などのアクターからあらゆる情報が一気に流れ出し、氾濫する海のなかで、主体的に必要な情報をキャッチし、政治的意思決定をすることの難しさと、その必要性を改めて伝えます。

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投票結果の発表!

最後は、いよいよ投票結果の発表です。

結果はなんと・・・

「賛成21、反対19」で、賛成派の勝利!!!

直前までわずかに反対派が優位だったにもかかわらず、

この結果には生徒も唖然。

選挙は最後までわかりませんね・・・

僅差で結果が変わってしまう、という体験をすることによって

投票すること(意思表明をすること)の大切さ」を

生徒には、より痛感してもらえたのでは、と思います。

おわりに

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

POTETOによる初めての主権者教育授業、いかがでしたでしょうか。

個人的には、授業が終わって教室を出る際にも「難民受け入れ」についての議論が

生徒同士で続いていたことが、自分の中ではすごくやりがいを感じましたし、

感動しました。

以下、授業後のアンケートの一部抜粋です。

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Q.今日の授業をうけてみて、どのようなことを感じ、考えましたか。

世論調査や投票でもほとんど半分に割れて、反対派で勝ってたのに、負けてびっくりしました。実際にある問題で今日の授業を通してもっと現実味を帯びて、しっかりと考えることができました。

・どちらに投票してもリスクがある。その中で自分なりの考えで判断していかなければならない。情報量が多いからといって正しい判断ができるというわけではない

一番興味なかったけど、今回の授業ですごく気になったし、身近に感じられた

・賛成の演説にも反対の演説にもどちらにも共感できたので、2回の世論調査と投票も全部悩みました

Q.今日の内容は、これからの生活の中でどのように活かせそうですか。

どの問題に対しても、反対の人と賛成の人がかならずいるということを体験できたので、お互いの意見を尊重することを学ぶことができた

一見興味がないことでも重要なニュースがたくさんあることが知れたからいろいろなものに関心を持とうと思った

・今の日本には、自分の考えを主張することができない人が多く、周りの意見に流されやすいところがあるので、自分の考えを独立して持ち、選挙等ではしっかり考えを持ち、社会に意見を出していくことが大切だと思いました。また、大きく国等を動かすこともあるので、しっかりを考えを持って行動していきたいと思いました。

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POTETOでは、今後も「イチメンニュース」や「アニメーション動画」など

若者目線で作成したオリジナル教材を活用した授業

を、実施していきたいと思っております。

ABOUTこの記事をかいた人

POTETO教育事業部長

中央大学法学部政治学科メディア政治コース4年。 大学2年生のときに中央大学の有志サークル「Vote at Chuo!!」を立ち上げ、大学内での選挙啓発や附属高校での主権者教育を行う。「生の政治」を扱った主権者教育・教科教育内での主権者教育実践などに関心あり。