前編では、「なぜブレグジットが起きたのか」について紹介しました。
後編では、「ブレグジットをめぐって今何が起きているのか」「ブレグジットは今後どうなるのか」について解説します!
何が起きているのか
2016年の国民投票で決定したイギリスのEU離脱。しかし、離脱が決まったからといって、すぐに離脱できるわけではありません。イギリスのEU離脱は今年の3月29日に予定されていますが、現在は実際に離脱するための条件に関する交渉がEUとイギリスの間で行われている状況です。
しかし、この交渉は順調に進んでいません。イギリスとEU加盟国の間の関税をどうするか、離脱に際してイギリスはいくらEUに支払うべきかなど、さまざまな点が議論されていますが、最大の争点はアイルランドの国境管理問題です。
アイルランド島では、イギリス領の北アイルランドとEU加盟国であるアイルランド共和国が陸続きで接していますが、離脱後の国境管理のあり方については、アイルランドで宗教をめぐる激しい紛争が約30年前まで続いていたという歴史的経緯もあり、多くの人を納得させられる答えがまだ見つかっていません。
昨年11月には、ようやくEUとイギリスが離脱協定案に合意することができましたが、この協定案が実際に成立するためにはイギリス議会下院での承認が必要です。しかしこの協定案は、野党のみならず、メイ政権を支えるはずの与党(保守党)からも多くの反対が出て、結局大差で否決されてしまいました。
メイ政権は、3月12日に離脱協定案を再び議会で採決。しかし、EUとイギリスの交渉に進展は見られず、賛成242、反対391の反対多数で否決されてしまいました。もし3月29日の離脱までに協定案が成立しなければ「合意なき離脱」が行われることになり、アイルランドとの国境や関税をめぐって大きな混乱が発生することが懸念されています。
13日にはイギリス議会下院でEUから合意なく離脱することに反対する動議が可決。またイギリス議会下院は14日、EUからの離脱の延期をEUに求める政府動議を賛成多数で可決しました。メイ首相は現地時間20日の夜に欧州連合(EU)からの離脱を当初の3月29日(英時間)から6月末に延期するようEUに要請したことを改めて表明しましたが、首相がなお「合意なき離脱」の道筋を示せない中で、英以外の27カ国が短期の延期を了承するかどうかは見通せない状況となっています。
今後どうなるのか
イギリスのEU離脱をめぐる情勢は、世界経済にも大きな悪影響を与えそうです。混乱の影響を懸念する企業の中には、イギリス国内の工場を閉鎖・移転する動きも出ており、EU離脱によってイギリスのGDPは最大で10%減少するという試算もあります。
世界に大きな影響を与えるブレグジットの行く末からは、目が離せません。
参考
英首相「6月末以降の延期、考えていない」 EU離脱で (日本経済新聞 2019.3.21)
英議会、EU離脱延期を可決 (日本経済新聞 2019.3.15)
イチから分かるブレグジット 大混乱のワケ (日本経済新聞 2019.2.28)
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