10月から消費税が10%に引き上げられますね。増税の理由は社会保障制度の充実といわれています。
社会保障制度とは「社会保険」「社会福祉」「公的扶助」「保健医療・公衆衛生」を総称したものです。
今回は消費者である私たちに一番関係が深い「社会保険」について考えてみましょう。
日本の社会保険制度は世界から見てどのレベルなのでしょうか。
日本の医療保険制度は世界一??
日本の医療保険制度は2000年に世界保健機関(WHO)から「総合点で世界一」と評価されました。
その理由は国民皆保険制度です。
この制度は、すべての国民が公的医療保険制度に加入し、医療費を出し合う制度です。
この制度のおかげで私たちは、病院に行っても医療費を3割の負担だけでサービスを受けることができます。
一方のアメリカの医療保険制度は??
一方、政府は原則として個人の生活に干渉しないとしているアメリカはどうでしょう?
アメリカには日本のような全員が入らなければいけない保険制度はありません。
公的医療保険制度は、高齢者向けのメディケア、障害者・低所得者を対象にしたメディケイドと呼ばれるもののみです。
これ以外の人は民間の保険に入るしかなかったのですが、民間の保険は高額で加入できない人も多く、全体の16%(およそ4400万人)が医療保険に加入していない「無保険者」になっていました。また破産の原因が医療費の支払いに起因することも珍しくない状態でした。
しかし、2009年に成立したバラク・オバマ政権で医療制度改革(オバマケア)が行われ、全ての人が医療保険に加入し医療を受けられるように改善が行われました。
オバマケアは「保険に入れなかった人たち」には救いをもたらす制度でしたが、持病があるから保険に入れなかった人が入ってくると、全体の保険料が上がってしまう可能性があるなど「既に保険に加入していた人」にとっては望ましくない制度とも言えます。
そこでトランプ大統領がオバマケアの廃止を訴えているのです。
現在すでに第一の柱である保険加入義務は廃止されており、今後残る二つの柱がどうなっていくかに注目が集まっています。
ドイツ・フランスの医療保険
アメリカ以外の国の医療保険制度についても見てみましょう。
まずは高福祉国家とも称されるドイツ(消費税率19%)。実は日本に次ぐ世界2位の高齢化率の国でもあります。
ドイツでは保険に国民の約87%が加入。
外来は負担なし、入院は1日につき10ユーロの負担、薬剤:10%定率負担(上限10ユーロ、下限5ユーロ)とかなり高水準の医療保険が整備されています。
続いてフランス(消費税率20%)。フランスも日本と同じく、国民皆保険制度が導入されています。国民の負担は外来30%、入院:20%、薬剤:35%になっています。
アメリカとは対照的にヨーロッパの国々にはドイツやフランスのように日本と同様かそれ以上の医療保険制度が導入されている国も見られました。
日本の年金制度
日本の年金制度は、20歳以上60歳未満の国民全員が入る国民年金(基礎年金)と、それに上乗せされて給付される厚生年金や共済年金などで成り立っています。
保険と同じく国民皆年金が達成されていますが、2018年度のグローバル年金指数ランキングでは34か国中29位と世界的には低い評価を受けています。
日本の年金制度の課題は、年金制度の持続可能性が低いところです。少子高齢化に伴い高齢者人口割合が増加していること、平均余命の伸長により公的年金の期待支給期間が長くなっていることが挙げられ、その対策を迫られています。
同じランキングで1位となったオランダの年金制度の特徴は、国が運営する年金(老齢年金)と、企業などが運営する年金(職域年金)の二つの制度が、法律に基づいて上手に組み合わせられている点にあります。
この二つの年金を合せると、現役時代の平均収入のほぼ 80%程度になる上、就労者の約9割がこの年金の恩恵を受けているといいます。また年金の持続性という点についても高い評価を受けています。
日本は速いスピードで少子高齢化が進行しているのにもかかわらず、ほかの先進国と比べて社会保障費の財源が少ないといわれています。
10月に行われる消費税増税で、状況が好転していくことを願うばかりです。
参考文献
・MERCER『マーサー「グローバル年金指数ランキング」(2018年度)を発表 日本の年金制度は34か国中29位』
・総務省統計局HP『1. 高齢者の人口』
・内閣府 『平成30年版高齢社会白書(全体版) > 2 高齢化の国際的動向』
・HUFFPOST 『話題の「オバマケア」何が問題なのか?』
・厚生労働省 『社会保障制度の国際比較について』
・けんぽれん 知って得する!?健康保険 『健康保険の基礎知識』
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