政治分野の男女共同参画推進法って、結局どうなの?
―ドイツを例に、考えてみる。

先日成立し、話題となった「政治分野における男女共同参画推進法」、いわゆる「候補者男女均等法」。

みなさんもニュースなどで目にしたのではないでしょうか?

このニュースを聞いて皆さんはどう思うでしょうか?

 

「すごく画期的なニュースじゃん!」「とうとう政治界も男女平等に向けた動きが始まるのか!」

 

おそらくこう思う人も多くいるでしょう。私もニュースを聞いたときはそう思いました。

でも、この法案をしっかり読むといろいろな疑問点が浮かび上がってくるのです。

今回はその問題点を、ドイツの「民間企業及び公的部門の指導的地位における男女平等参加のための法律」、いわゆる「女性クオータ法」を例に挙げて考えていきたいと思います。

 

1.日本の「政治分野における男女共同参画推進法」を、わかりやすく読み解いてみる

 

今回成立した「政治分野における男女共同参画推進法」、さすがに法案全部読むのはめんどくさいって?

そんな忙しい人たちのために、わかりやすく読み解くとこんなカンジ。

今回注目してほしいのは、「具体的な数値目標が一切書かれていないこと」。

具体的な数値目標が書かれてないことに加え、この法案は強制力のない「理念法」にとどまっています。

さて、この法案のことをよく知った皆さんに改めてお聞きします。

この法案が成立したことに対し、どう思いましたか?

 

おそらくこの法案がどのくらいの影響を与えうるのか、疑問を持つ人も少なからずいるかと思います。

では、海外の事例―今回はとりわけドイツ―はどのようなものか、焦点を当ててみましょう。

 

2.海外での事例はないのか?―ドイツを取り上げてみる。

ドイツでは、実は政治分野では1980年代後半から各政党が綱領においてクオータ制を規定しています。

また、2015年には「連邦平等基本法(Bundesgleichstellungsgesetz)」、「連邦委員会構成法」が施行されています。

 

この二つについては後述するとして、まずはクオータ制について簡単にまとめてみました。

クオーター制は、政治において議員候補者の一定数を女性と定める制度のことです。

クオータ制は現在 100以上の国で採用されており、各国で整備が進められています。

 

女性を積極的に採用するこの制度、一見すると「男女共同参画社会」を目指すには手っ取り早い方法かもしれませんが、しかし一方で懸念点もあります。

では、ここで肝心のドイツはどうなのか見てみましょう。

 

前述の通り、ドイツでは「連邦平等基本法」「連邦委員会構成法」の二つが政治分野における代表的なクオータ制言えるでしょう。

「連邦平等基本法」は、連邦の各機関において、女性の比率が50%未満の部門における昇進や採用の場合でかつ男女の能力が同等だとみなされた際は優先的に女性が採用される制度のこと。

「連邦委員会構成法」は連邦の活動に影響を与える委員会の委員選出の際は可能な限り男女の数が均等になるように定めているもの。

 

2015年に成立した通称「女性クオータ法」では、これらの二法を改正し、より具体的な数値目標を掲げたのです。

3.この法案で日本の政治分野は変わることができるのか?

現在の日本の衆議院参議院、地方議会における女性議員の割合を皆さんご存知でしょうか?

衆議院の女性議員比率は2017年の秋に行われた選挙によって10.1%に。

参議院の女性議員比率は2017年の秋時点で20%。

地方議会における女性議員の比率は2017年12月時点で12.8%と、どれも低い数字になっています。

 

一方、先ほど例に挙げたドイツは連邦議会(日本の衆議院)で30.9%、地方議会で31.4%と、すごく高いとは言えないものの、それでも日本よりは高い数字になっています。

 

しかし、クオータ法も、優先的に女性を採用するのは「逆差別だ」という声もあります。

確かに、仮に同程度の能力があるからと言って優先的に女性を採用するのは、女性にとってもある意味で不利な環境におかれます。

ここまで読んでくださった皆さんはどう思いますか?

今回の法案が変わる大きなきっかけになるでしょうか?

 

実は、今回の法案には附帯決議もされており、そちらは内閣府委員会で全会一致で賛成を得ています。

こちらの附帯決議の内容、見たことありますか??

こちらの附帯決議、私は参議院の会議録をあさりにあさって見つけたのですが、実は、ここに女性議員を増やすための「大切なこと」が記されているのです。

 

 

こんな附帯決議が一緒に成立していたのを皆さんはご存知でしたか?

改めて成立した時のニュースを見てみると、実は「附帯決議も成立」としか書かれておらず、具体的な内容についての言及はありませんでした。

 

私は、この「附帯決議」こそが、日本の政治分野において女性の活躍を発展させるための「きっかけ」を持っていると思います。

 

まだ成立して間もない、「政治分野における男女共同参画推進法」。

果たして国や地方自治体は、この「きっかけ」をどのようなものへとしていくのでしょうか?

 

 

参考文献
中谷 毅 「ドイツにおける女性議員のクォータ制―ドイツ社会民主党の事例を中心に―」『年報 政治学』 61巻(2010) 2号 2_48-2_67


衆議院 「政治分野における男女共同参画の推進法律案」 http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g19001060.htm

 衆議院 「政治分野における男女共同参画の推進法律案に対する附帯決議」
http://www.gender.go.jp/about_danjo/law/pdf/law_seijibunya03.pdf

 衆議院 第196回国会 内閣府委員会 会議録http://online.sangiin.go.jp/kaigirok/daily/select0101/main.html  


Deutschland Bundestag Abgeordnete in Zahlen Frauen und Männer https://www.bundestag.de/abgeordnete/biografien/mdb_zahlen_19/frauen_maenner/529508  


Landeszentrale für politische Bildung Baden-Württemberg Politik themen Dossiers „Frauen in den Länderparlamenten“

https://www.lpb-bw.de/frauenanteil_laenderparlamenten.html  


独立行政法人 労働政策研究・研修機構 「女性クオータ法、成立」 http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2015/06/germany_01.html  

 

 

Writer: Haruna KAWANISHI

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です